2025年1月~6月期 宇宙開発イベントカレンダー

民間企業による月面着陸の再挑戦で始まった2025年。
今年も歴史あるロケットの最後の打ち上げや国際的なプロジェクトの進展、民間企業の挑戦など、注目イベントが目白押しです。
事前にチェックし、宇宙への夢がさらに広がる半年間を一緒に楽しみませんか?
※2025年3月19日現在の情報です。
ロケット打ち上げ(無人)
1/15 ispaceの月着陸船打ち上げ成功(日本)

ispace の開発する月着陸船レジリエンス(RESILIENCE)の打ち上げが行われました。
レジリエンスは月面探査計画「HAKUTO-R」の2段階目および、月面着陸の再挑戦を行う探査機です。
打ち上げは日本時間1月15日午後3時11分にケネディ宇宙センターで行われ、SpaceXのファルコン9(Falcon9)のロケットに、同じく米国の新興宇宙企業であるファイアフライ・エアロスペースが開発し月面着陸に挑戦する探査機ブルーゴースト(Blue Ghost)と相乗りの形で宇宙に送り出されました。
ispaceは独自の月面探査計画「HAKUTO-R」を進める宇宙企業です。2023年に民間初の月面着陸を挑戦したことで話題になりました。しかし月面着陸には失敗したため、着陸失敗の原因を分析したうえで、今回の探査機には「再起」や「復活」の意味をこめ「レジリエンス」の名称がつけられました。
レジリエンスは月面着陸の再挑戦のほか、月の砂であるレゴリスの採集を行い、採取したレゴリスの所有権をNASAに譲渡する契約を結んでいます。実現すれば、国内企業が宇宙資源の商取引を行う初の事例になります。
相乗りとなったブルーゴーストは月面への観測機器などの輸送をNASAが民間企業に有償で委託する
「商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services CLPS)」の一環で開発され、10個の観測機器や技術実証用のペイロードを搭載しています。
1/16 新型ロケット・ニューグレン初打ち上げに成功(アメリカ)
ニューグレン打ち上げの様子 – Blue Origin公式サイト
大型ロケット・ニューグレン(New Glenn)の初となる打ち上げが行われました。
ニューグレンはアメリカの宇宙企業ブルーオリジン(Blue Origin)が開発する新型のロケットです。ニューグレンはSpaceXのファルコン9と同じ再利用型のロケットで、全長98m、ペイロード容量(搭載できる衛星の総重量)は低軌道で45t、静止軌道で13.6tとなります。
打ち上げはケネディ宇宙センターから行われ、軌道上へのペイロード投入や宇宙船の燃料補給などを行う宇宙輸送機「ブルーリング」のプロトタイプ機がペイロードとして搭載されました。
打ち上げとブルーリングの軌道投入には成功した一方、再利用部分であるブースターの回収には失敗しています。
2/2 H3ロケット5号機、みちびき6号打ち上げ成功(日本)

H3ロケット5回目の打ち上げが行われました。
H3ロケットはJAXAと三菱重工業が開発を行った大型の衛星運搬ロケットです。今回で5回目の打ち上げとなります。
ペイロードである衛星「みちびき6号」は、日本を中心としたアジア太平洋地域を周回する準天頂軌道衛星を使用した「準天頂衛星システム」の「みちびき」を構成する衛星です。「準天頂衛星システム」はアメリカが運用するGPSと同様の衛星測位システムで、GPS衛星と「みちびき」の衛星を組み合わせることで、アジア太平洋地域のより安定した位置情報を得ることが可能です。
「みちびき」は準天頂軌道の衛星と静止軌道の衛星の2種類で運用されており、「みちびき6号」は静止軌道衛星になります。
2010年に初号機が打ち上げられ、2018年に衛星4機でサービスが開始されましたが、サービスや機能向上のために2026年度に向けて7機体制に増やす事を目指しています。将来的にはバックアップ強化のために11機体制へと拡張することで、もし1機が故障しても、測位機能を維持できるようにする予定です。
2/27 YAOKI 搭載のNova-C IM-2&ルナ・トレイブルレイザー、月面着陸(アメリカ・日本)
月面着陸船Nova-Cとともに、月の表面にある水を調査するルナ・トレイブルレイザー(Lunar Trailblazer)と、日本の民間企業・株式会社ダイモンが開発した月面探査車YAOKI の打ち上げと月面着陸が実施されました。
Nova-C IM-2はアメリカの民間企業・Intuitive Machinesが開発した月着陸船Nova-Cの2号機です。1号機のIM-1は2024年に民間初の月面着陸を成功(横倒し状態で着陸)させたことで話題になりました。Nova-Cは多数の計器や探査機などを搭載しており、その中にYAOKIが含まれます。
また、ルナ・トレイブルレイザーがNova-Cと相乗りになりました。
ルナ・トレイブルレイザーはカルフォルニア工科大学が中心となって開発を行っており、月面の水の形状、水量の変動、位置関係を調査し、水の分布マップ作成を目標としています。
YAOKIは超小型月面探査車で、15×15×10cmの手のひらほどの大きさと、重量498gの軽量性が特徴です。また、100Gにも耐える衝撃性や、転倒しても走り続ける特性も兼ね備え、コストを抑えながらの地形が複雑な月面の探査を実現します。
Nova-Cとルナ・トレイブルレイザーは2月27日午前9時16分にケネディ宇宙センターから打ち上げられ、3月7日午前2時32分に月面着陸が行われました。
機体は月南にある「ムートン山」のクレーターに着陸しましたが、着陸時に横倒しの状態となったため電力確保が難しく、着陸後のミッションは一部を除き実施されずに終了しました。
YAOKIの放出も行われませんでしたが、Nova-Cの中に納まったまま動作確認が行われ、さらに月面の撮影とデータの送受信にも成功しています。
Lunar Trailblazer公式サイト:https://trailblazer.caltech.edu/
YAOKI(dymon)公式サイト:https://dymon.co.jp/yaoki/
3/12 宇宙望遠鏡スフィアーエックス 打ち上げ成功(アメリカ)

3月12日(日本時間)にヴァンデンバーグ宇宙軍基地から宇宙望
スフィアーエックスは天の川銀河の恒星1億個以上と、約4億50
プロジェクトはNASAが指導し、衛星の開発は国防の衛星やハッ
3月予定 ブルーオリジン 月着陸船打ち上げ実施(アメリカ)
ブルーオリジンの開発する月着陸船ブルームーン(Blue Moon)の打ち上げが行われる予定です。
ブルームーンはブルーオリジンが進める月着陸船シリーズで、無人の月着陸船MK1と有人の月着陸船MK2の2つのバージョンの開発が進められています。
無人の月着陸船MK1は月面に約3トンのペイロードを送り込む事を可能にし、月面車(ローバー)の輸送や、通信拠点などに活用される予定です。
有人の月着陸船はNASAのアルテミス計画においても使用される予定と発表されています。
今回の打ち上げであるBlue Moon Pathfinder Missionは、無人の月着陸船MK1のデモンストレーションとなり、ペイロードなどを搭載せず、ブルームーン単体で打ち上げが行われます。
打ち上げにはブルーオリジンのロケット・ニューグレンが使用される予定です。
5月予定 ドリームチェイサー 初の商業補給ミッション(アメリカ)
飛行機型の宇宙船(スペースプレーン)「ドリームチェイサー」(Dream Chaser)による商業補給ミッションが行われます。
ドリームチェイサーは、コロラド州ルイビルを拠点とするアメリカの民間宇宙航空企業シエラスペース(Sierra Space)が開発を行っている宇宙船です。2004年からSpaceDev社が開発を進めていましたが、2008年にSpaceDev社がシエラスペースに買収されプロジェクトが引き継がれました。2012年から2017年にかけて4回ほど試験飛行が行われていますが、商業宇宙飛行としては初めての試みとなります。
無人の貨物と有人宇宙船の2つの形式があり、いずれもスペースプレーンです。スペースプレーンは大気圏内では航空機として機能を持ち、滑走路に着陸が可能であるのが特徴で、代表的なものではスペースシャトルが挙げられます。
商業補給ミッションは民間の宇宙船を利用してISSに貨物や物資の輸送を行う取り組みで、これまでSpaceXのドラゴン宇宙船やノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ社(アメリカ 元オービタル・サイエンシズ社)のシグナス無人宇宙補給機などが採用されています。
ドリームチェイサーは将来的に公共空港への着陸を目標としており、アジアの着陸拠点として大分空港が選ばれています。
6月予定 セレス2 初の打ち上げ(中国)
中国の民間企業が開発するロケット「セレス2」の打ち上げが予定されています。
セレス2(Ceres-2 谷神星二号)は中国北京を拠点とするギャラクティック・エナジー社(星河动力)が開発するロケットで、先に開発、運用されているセレス1(Ceres-1 谷神星一号)の改良版になります。
セレス1は2020年11月7日に行われてから9回の打ち上げを成功させており、2025年も3回の打ち上げを予定しています。
セレス2の詳細については発表されていませんが、セレス1よりコスト削減や輸送能力が大幅に向上するとされています。
有人宇宙飛行
3/15 大西宇宙飛行士参加、Crew-10実施(アメリカ)
Crew-10打ち上げの様子 – NASA公式You Tube
3月15日8時3分(日本時間)、米国フロリダ州 ケネディ宇宙センターにて大西卓哉宇宙飛行士が参加するCrew-10の打ち上げが実施されました。
Crew-10はNASAがクルードラゴンなどの民間の宇宙船を利用し、半年ごとにISSクルーの入れ替えを行うCCP(Commercial Crew Program 商業乗員輸送開発)プログラムのミッションです。
CCPは2011年から実施されており、近年では2022年のCrew-5に若田光一宇宙飛行士、2023年のCrew-7に古川聡宇宙飛行士が参加しています。
クルーのメンバーは大西宇宙飛行士のほか、アン・マクレイン氏(アメリカ)、ニコール・エアーズ氏(アメリカ)、キリル・ペスコフ氏(ロシア)の4名です。大西宇宙飛行士は第73次長期滞在のコマンダーも務めます。
CCPによるISSの長期滞在には、油井亀美也宇宙飛行士の参加も発表されています。(2025年3月時点では参加ミッションの詳細は未発表)
また、ISSに滞在するCrew-10とCrew-9のメンバーが入れ替わりになると同時に、2024年6月に打ち上げられた宇宙船「スターライナー」の乗組員がCrew-9のメンバーとともに地球に帰還予定です。
4月予定 アクシオムミッション4実施(アメリカ)
民間宇宙企業アクシオム・スペース(Axiom Space)による4回目のISS滞在ミッションが実施される予定です。
アクシオムミッション4(Axiom Mission4またはAx-4)は2022年から実施されている民間宇宙飛行計画で、参加するクルーは全員民間人(元NASA等の宇宙飛行士を含む)であることが特徴です。
Ax-4のメンバーはコマンダーで元NASA宇宙飛行士であるペギー・ウィットソン氏(アメリカ)、シュバンシュ・シュクラ氏(インド)、スワヴォシュ・ウズナンスキ氏(ポーランド)、ティボール・カプ氏(ハンガリー)の4名です。インド、ポーランド、ハンガリーの宇宙飛行士がISSに滞在するのは初めてです。また、ペギー・ウィットソン氏は2回目のアクシオムミッションにも参加しており、同様にコマンダーを務めました。
メンバーはISSには16日間滞在する予定です。
4月予定 神舟20号打ち上げ(中国)
中国の有人宇宙飛行ミッションが実施予定です。
「神舟」は1999年から運用されている有人飛行ロケットで、中国独自の宇宙計画「神舟計画」のために開発されました。現在は主に中国の宇宙ステーション「天宮」の半年ごとに人員交代に利用されています。
神舟の打ち上げは昨年10月の神舟19号以来となります。
2025年3月現在、クルーの詳細は告知されていませんが、通常であれば中国人民解放軍宇宙飛行士隊から2~3名が選抜されます。
打ち上げは酒泉衛星発射センターから行われる予定です。
2025年前半も見逃せないイベントが盛りだくさん!
ロケットの世代交代や新たな宇宙望遠鏡スフィアーエックスの打ち上げ、民間宇宙飛行など、前半だけでも様々なイベントが予定されている2025年。
民間と国家プロジェクト共に活発に動いており、実行される新たなミッションや技術革新は、私たちの宇宙への理解をより深め、今後の宇宙開発の方向性を示す重要な指標となりそうです。